その夜、音楽の神が庭に降りてきた

2020年6月13日。COVID-19の流行にも関わらず、ジルベルト・ジルと彼の家族は、私たちのために自宅の庭でライブを行なった。常に音楽と社会に真摯に向き合ってきたブラジル音楽の巨星ジルベルト・ジル。家族との絆が生み出す、暖かくも崇高な音楽。仏TV局(France Televisions)の企画で特別収録された、家族だけが見守る無観客ライブ映像。日本初の劇場公開。

Introduction

 2020年、新型コロナウイルスの影響で世界中が静まりかえっていた時期——ジルベルト・ジルは、ブラジル・リオデジャネイロ州アララスの自宅の庭で家族と共にライブを開催した。
 「コロナ禍の中でも、皆さんに聴いてもらうために、家族と暮らすブラジルの家からこうして歌えることを私は幸せに思います」と家族であるメンバーを紹介する。このスペシャルライブは、熱帯の秋の日差しの中で始まり、日が暮れるまで続いた。
 ジルの代表曲『EXPRESSO 2222/エスプレッソ2222』『PALCO/舞台』『TOUCHE PAS A MON POTE/ぼくの仲間に手を出すな』に加え、ボブ・マーリーの名曲『THREE LITTLE BIRDS』なども披露。 ソングライターとしての豊かさ、シンガーとしての奥深さ、そして壮大な音楽世界へと観客を誘っていく──。

セットリスト

01. PALCO

02. UPA NEGUINHO

03. VIRAMUNDO

04. ESOTÉRICO

05. TEMPO REI

06. OS PAIS

07. THREE LITTLE BIRDS

08. REFAZENDA

09. TOUCHE PAS A MON POTE

10. ANDAR COM FÉ

11. MILAGRE

12. FLORA

13. SUPERHOMEM – A CANÇÃO

14. ESTRELA

15. NO NORTE DA SAUDADE

16. NEL BLU DIPINTO DI

17. AFOGAMENTO

18. TRES PALABRAS

19. ORIENTE

20. OPACHORÔ

21. EXPRESSO 2222

22. ESPERANDO NA JANELA

23. FELIZ POR UM TRIZ

24. TODA MENINA BAIANA

ジルベルト・ジル プロフィール

 1942年、ブラジル・バイーア州の古都サルヴァドール生まれ。 1967年、ブラジル各地の要素を独自の視点で音楽へと昇華した初アルバム『Louvação』を発表。以降、60枚を超えるアルバムをリリースし、累計セールスは400万枚以上。グラミー賞を9度受賞し、50年以上にわたりブラジル音楽界を牽引してきた、まさにブラジル音楽を語る上で欠かせない存在である。
 バイーア大学在学中に出会った友人カエターノ・ヴェローゾとともに、ポップ・カルチャーのムーヴメント「トロピカリズモ」を展開。その先鋭的な活動が軍事政権により問題視され、カエターノと共に逮捕されて約2年半ロンドンへ亡命した。亡命中はロックやR&Bを吸収し、帰国後はレゲエやアフリカ音楽なども取り入れて音楽の幅をさらに広げていく。
 2002年にはブラジルの文化大臣に就任。音楽活動の多忙を理由に退任するまでの6年間、精力的に職務を務めた。2008年の来日では、横浜赤レンガパークで開催された「10,000 SAMBA! ~日伯移民100周年記念音楽フェスタ~」に出演し、THE BOOMらと共に「島唄」を披露。
 2018年、76歳で発表したアルバム『OK OK OK』は、30組以上のゲストを迎えて制作され、近年のジル作品の最高傑作との呼び声も高い。
 そして2024年、16年ぶりとなる来日公演『Aquele Abraço Japan Tour 2024』を開催。本作『ゴッド・イン・ヒズ・ガーデン』同様、家族によるファミリーバンド編成で、ベム、ホセ、フロールの3人もステージに参加した。

コメント
宮沢和史

故郷を愛し
自然を愛し
音楽を愛し
人を愛し
ボブ マーリーを愛し
ブラジルを愛し
世界を愛し
日本を愛し
家族を愛し
……
ジルはその人生で
数多くのものを愛し尽くしてきた
そして 他にそそいだ以上の愛に包まれ
今愛を歌っている

中原 仁
(音楽・放送プロデューサー)

自然に囲まれた高原の別荘の庭で、娘のナラ(54歳)、息子のベン(35歳)、ジョゼ(29歳)、孫のフロール(11歳)と共に歌う、家長ジルベルト・ジル。つねに圧倒的なカリスマ性を発揮するライヴ・パフォーマンスとは異なる、普段着の穏やかな表情があるが、彼の歌声は人々を勇気づけ、抱擁し、共に生きることの大切さを訴える。 1985年にフランス語で作詞、録音した「Touche pas à mon pote(僕の仲間に手を出すな)」は、アフリカ系の移民への差別、人種差別の撤廃を訴える曲で、歌詞は今の時代にも深く突き刺さる。家族との平和な日々があるからこそ、当時80代目前だったジルが永遠の闘士であり続けることができるのだろう。

栗本 斎
(音楽&旅ライター/選曲家)

美しい自宅の庭園で、幅広い世代の家族に囲まれながら、淡々と名曲を歌い綴る。ただそれだけなのに、心が温かくなってくるのはなぜだろう。 コロナ禍のつらい時期だったからこそ実現した、親密なライヴ空間。トロピカリアにおける先鋭的なアプローチや、文化大臣として政治を支えた時代を経たからこそ生み出される、穏やかながら生命力に満ちた音楽。本国ブラジルで体感した時とも来日公演ともひと味違う特別なパフォーマンスに魅了されました。音楽愛と家族愛に包まれた至福のアンサンブルを体感していただきたい。

Production LES FILMS DE LA BUTTE / GEGE PRODUÇÕES ARTíSTICAS
Co- Production France Télévisions
Producer NICOLAS LESOULT / SOPHIE DE HIJES
Director ANGEL DIEZ
Ⓒ LES FILMS DE LA BUTTE-GEGE PRODUÇÕES ARTíSTICAS–2020

原題:Gilberto Gil / A God in his Garden
2020年(仏)/上映時間:105分/ステレオ
提供:S-O-C-K-S INC.
配給:REWINDERA PICTURES
劇場及びプレス窓口:SANTA BARBARA PICTURES
配給協力:LITTLE MIRACLE
後援:駐日ブラジル大使館